古民家の再生は、美観を整えるだけでは終わりません。現場で後悔が多いのは「住める状態」にするための土台を、甘く見た時です。代表的なのが、冬の寒さや夏の暑さを左右する断熱や地震に耐えるための耐震、そのほか工事途中で予算が崩れるコスト爆発の3つです。工事が始まってから気づいた場合、やり直しや追加工事が増えることで、時間もお金もふくらみます。
また、古民家は、同じ築年数だとしても各住まいで傷み方が異なるのです。雨の当たり方や床下の湿気、過去の増改築の有無により、中身が違うからです。この点を踏まえると「他人の成功例」をそのまま真似することが失敗につながります。
そこで今回のお役立ちコラムでは、古民家リノベで「よくある落とし穴」に関する失敗事例についてくわしくお話しします。そのうえで、失敗を避けるために最初に決める順番や見積もりの見方、予算を守るための線引きまで整理しました。
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断熱・耐震で後悔する落とし穴

古民家は築年数の関係で、すき間やゆがみは前提と考えなければなりません。美観を先に整えると、性能が追いつかなくなるのです。とくに断熱と耐震は、後から追加しようとすると、壁や床をまた壊すことになります。その結果、費用も工期も増えてしまうのです。
断熱を後回しにすると、寒さより「湿気」で失敗する
よくあるのは「床や壁をきれいにしたのに、冬が寒くて暖房が手放せない」「夏は蒸してカビ臭い」などです。古民家はすき間が多く、室内外の温度差で結露が起きやすい傾向もあります。さらに断熱材だけを入れた結果、湿気の逃げ道がなくなると、壁の中で濡れて木が傷みかねません。数年後、補修が増えることさえあります。
体感の寒さだけでなく、カビ臭や黒ずみ、そのほか床のふわつきが出て「やり直したい」となってしまうのです。
対策は、断熱を「材料」ではなく「順番」で考えることです。湿気が溜まりやすい場所から整え、最後に窓まわりを詰めます。ここが逆になると、湿気が建物内に閉じ込められやすくなるのです。以下は、古民家リノベーションで、断熱を考える際のポイントです。
- 床下の湿気対策(点検口を作り、腐れやシロアリも確認)
- 天井・屋根の断熱(熱の出入りが大きい場所を先に押さえる)
- 窓の改善(内窓や建具のすき間対策で体感が変わる)
- 換気の計画(空気の入口と出口を作り、湿気を逃がす)
加えて、改修後に「どの部屋を快適にしたいか」を先に決めると迷いを減らせます。寝室と脱衣所を優先するだけでも、満足度は大きく上がるのです。
断熱は「入れれば終わり」ではなく、防湿・通気・換気までセットで成立します。気密が上がるほど換気計画の重要度も上がり、部分断熱だけ先行すると部屋間の温度差が広がって結露ポイントが移動することがあります。
優先したい部屋を決め、床下の湿気経路と空気の出口を先に作ってから断熱を当てると失敗しにくいです。
耐震は「補強を足す」より「現状を知る」が先
後悔が多いのは「広いLDKにした後、建物を支える壁が減り、追加の補強が増えた」「基礎が想像以上に傷んで工事が止まった」というパターンです。古民家は築年が古いほど、今の耐震の考え方と違う作りや、金物の少ない作りが残ることもあります。
必要なのは耐震診断です。「柱・梁・接合部」「基礎」「傾き」まで見て「弱い場所」を特定します。そのうえで、補強は闇雲に壁を増やすのではなく、屋根や土壁などの重さや間取り変更の範囲とセットで考えます。
最低でも「大地震でも倒壊しない」を目標に置き、設計者と施工側が同じ図面で補強位置を共有するのです。途中変更は早い段階で止めるほど、コストは安定します。
間取りを変えたいなら「残す柱・抜く柱」を先に整理し、後から迷う時間を減らすことが大切です。診断結果と補強案は書面で受け取り、根拠を確認しておくと安心です。
耐震は「補強を増やす」より、診断で弱点を特定して効かせるのが近道です。木造の耐震診断は一般診断法・精密診断法などの枠組みで整理され、評点で倒壊リスクを見立てます。築年もヒントになりますが、1981年以前や2000年以前は仕様差が出やすいので、結果と補強方針を図面と書面で残し、間取り変更と同時に動かすのが安全です。
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コスト爆発は「解体後」と「打合せ後半」で起きる

古民家リノベの費用が跳ねるのは、解体で劣化が見えた瞬間や、後半で仕様が増え続けた瞬間です。最初は安く見えた計画でも、追加が重なると別物になります。増えるタイミングを知るだけで、防げる失敗は多数あるのです。
解体して初めて出る追加工事を、最初から見込む
古民家では「壊して初めてわかった」という劣化も多々あります。梁の腐れやシロアリ跡、雨漏りの痕や配管や配線の老朽化などです。このような劣化は、追加工事の増加に直結します。
ここで「想定外」を連発すると、予算は簡単に崩れるのです。さらに解体材の処分費や仮住まいの費用や工期延長も見落とされがちな要素と言えます。
対策として、契約前に調査範囲と「追加が出る条件」を言葉にしておくことです。床下や小屋裏は点検口から確認し、可能なら一部だけ開けて状態を見ます。見積もりでは「解体・下地・設備」を分け、追加見積の手順(誰が、いつ、何を根拠に提示するか)まで決めておくのです。予備費は最初から確保し、目安として総額の10〜20%を見込むと、判断がぶれにくくなります。
追加工事を「想定外」にしないコツは、契約前に“追加が出やすい領域”と“出たときの手順”を固定することです。床下・小屋裏・水回り周辺は劣化が集中しやすいので、点検口からの確認に加えて、必要なら部分開口の可否まで相談します。
追加は「写真+理由+金額」をセットで提示し、承認後に着手するルールにしておくと予算が守りやすいです。
仕様の増殖を止める「3つの線引き」
もう一つの落とし穴は、打合せ後半で仕様が増え続けることです。設備や仕上げは一つずつ見れば費用は小さく感じられても、合計で大きく跳ね上がります。とくに断熱・窓・設備のグレードにこだわり過ぎるとすぐに上がりやすく、最初の想定から離れていきます。防ぐには以下のような「3つの線引き」を、最初に決めておくことです。
- 性能の線引き:断熱・耐震の目標を言葉か数値で固定する
- 範囲の線引き:直す部屋や手を付けない部屋の決定
- 期限の線引き:変更できる日を決め、それ以降は増額か次回に回す
見積もり比較は総額だけではなく、工事範囲や材料のグレード、保証と点検の条件まで同じ土俵にしてそろえておきます。また、追加工事の承認は口約束にせず、金額と理由を書面で残すと揉めにくくなるのです。施工業者から判断を急かす話が出たり、その場で契約を迫る流れが出たら注意してください。
施工側から見ると、有効な対策は「施主側の準備」と言えるのです。床下と小屋裏を見られるなら、写真を撮って雨漏り跡やカビ臭などの有無をメモします。要望は「絶対に守りたい3つ」に絞り、同条件で2〜3社に見積依頼すれば、差が値段ではなく「根拠」で見えてきます。
基本的に「断熱・耐震・予算の順番」を守れば、古民家の良さを残しながらも、普段使いできる住まいにできます。不安が大きいなら「現況診断→概算→仕様確定→契約」の順に立て直したほうが確実です。
線引きを効かせるには、運用ルールに落とすのが要点です。Must(絶対)/Should(できれば)/Could(余裕があれば)で要望を仕分けし、仕様凍結日を1回決めます。
それ以降の変更は「増額」か「別工事に回す」を原則にし、変更のたびに金額と理由を書面で残します。判断を急かされる場面が出ても、その場で決めず前提条件を持ち帰るだけで失敗率は下がります。
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古民家リノベーションで後悔が多い理由は、デザインや雰囲気づくりを優先し、「住める性能」の整理が後回しになる点にあります。特に断熱・耐震・コスト管理は、工事が始まってから修正しようとすると、解体のやり直しや追加工事につながり、結果的に時間も費用も膨らみがちです。
断熱は寒さ対策だけでなく湿気の逃げ道まで含めた順番設計が不可欠で、耐震は補強を足す前に現状把握と診断が欠かせません。さらに、解体後や打合せ後半で起きやすいコスト爆発は、事前の線引きと予備費の確保で防げるケースが多いのです。
リノベ建築工房では、古民家特有の個体差を前提に、断熱・耐震・予算の優先順位を整理し、「どこまでやるか」「どこは次回に回すか」を明確にした計画づくりを行っています。
現況診断から概算、仕様確定までを段階的に進めることで、想定外を最小限に抑え、普段使いできる住まいへ導きます。古民家リノベで失敗したくない方は、まずリノベ建築工房にご相談ください。
お問い合わせフォームからのお問い合わせはもちろん、メールや電話でのご相談、ショールームへの来店にも対応しています。最初の判断が、その後の満足度を大きく左右します。